烏骨鶏物語にようこそ

2番目の噺

　落ち込み噺

　鶏小屋が欲しい、鶏小屋が欲しい。アタマから離れない。今や欲望の塊。

　ネットで鶏小屋掲示板というのを見つけた。鶏好きの人たちが手作り鶏小屋を写真に撮ってUPしている掲示板だ。
　水飲みや餌箱は外付けで、鶏が餌や水をこぼさないように、糞が混ざらないように工夫がされていたり、産んだ卵を鶏につつかれることなく外から卵だけ取る方法が工夫されたり、いろんな鶏小屋があった。
　手作りで安く仕上げる方法は、知り合いに大工さんがいれば、潰す家があったら、そこからサッシやドア、廃材が欲しいと頼んでおくというのがいいらしい。早速大工さんに電話をして頼んでおいた。でも、そうそうタイミングよく潰す家があるとは限らない。もし手に入っても果たして自分で作れるだろうか。

　鶏小屋が欲しい熱がヒートアップUPUP。資金はない。月賦ならなんとかなるかも。大工さんにまた電話。大工さんがとりあえず見にいくわと来てくれた。大工さんの家にも烏骨鶏がいるそうだ。

　大工さんは烏骨鶏を見て「水城さん、これオスばっかりとちゃうか。こんなんにお金かけたらもったいないで。この小さいのだけはメスかもしれんな。もし、メスやったらオスにいじめられて殺されるかもしれへんで」
　私はがっくり、がっくり。2羽はメスだと思っていたのが、全部オスか1羽だけメスか。しかし、まだ卵の希望の灯は消えてはいない。
　けれども話は続く。「オスはなー餌食うだけで、しょうないで。わしとこメス1羽欲しいし、知り合いから買（こ）うたんやけど、10000円で、頼んでないのにオスもついてきて。メス買うたら、オスが付いてくるいうて。オスはやかましいし、夜中に便所行く時、ちょっと電気つけただけで“コケコッコー”言うて大きな声で鳴きよるし。このごろ近所迷惑心配してるんや」
　ますます落ち込み。

　ところで、どうしていじめ殺されるのか、いま一つわからないので聞いてみた。大工さんは私が♀なので、気を使ってくれて「いじめられる」と表現してくれたようだ。実際は精力絶倫？のオスがメスにのっかりまくって、メスが疲弊して死ぬということらしい。
　後に聞いた話では、オス1羽にメス30羽くらいでいいそうだ。うちはメスかも知れないちいちゃん1羽にオス3羽。もしメスだったらもう少し大きくなったら離して飼う方がいいと教えてもらった。

　大工さんは、庭に放置してあった壊れた塀を見て「あれで囲（かこ）たったらええ。釘でも針金でも何でもええし、四隅を留めたらちゃんと立つ。メスやとわかったら何か作ったげるし、その時また連絡し」と、休みの日にわざわざ足を運んでくれ、教えてくれた。感謝。

　烏骨鶏の運動場

　その方法なら私でも何とかできそうだ。烏骨鶏の運動場を作ってあげよう。今ある移動ゲージではどう考えても狭い。日に日に大きくなってきているし。１畳ほどのスペースはあったほうが絶対いい！針金ならいっぱいある。

　早速、壊れた塀を寄せて針金で留めていこうとしたが、手は２本しかない。あっちを立たして、こっちをもたらせて、うまいこといかん、こけた。この方法ではあかんな。
　この場所で組み立ててしまって大丈夫やろか？一度組み立てたら運べへんしな。烏骨鶏は寒さには強いが暑さに弱いらしい。夏になったらまた考えたらいいわと、今は冬で寒いから南も向いて、西陽も当たる家の西側に苦心と工夫の結果、運動場の囲いが出来上がった。
　そうなると欲が出てきて、雨の日も大丈夫なように屋根もつけてやろうと、塀の壊れたのを乗せて、エアキャップをかぶせ、飛ばないように石やレンガを乗せた。

　烏骨鶏鍋
　天気のいい日は鶏も日光浴がしたかろうと、移動ゲージに入れている。凛が吠えるので、烏骨鶏を表に出してあるのを察して動物好きのあばちゃんがやってきた。この日はホームセンターで買ってきたセメント用の砂を洗面器に入れて砂浴びするかなーと思っていた時だった。おばちゃんがやってきたちょうどその時に、最初に鈴木さんが洗面器に入り、思いっきり砂をかいて、そのうち寝転んで、まさに砂浴びを始めた。おばちゃんと私は喜んで見ていた。うるさい凛は抱いてやったらおとなしくなり、二人と１匹で日向ぼっこをしながら烏骨鶏の砂浴びに和んだ（１匹の本心はわからないが）。

　そのうち他の３羽も入ってきて、洗面器は満員のお風呂というか鶏鍋状態。二人して大いに笑った。初めて見る光景。この日はデジカメが行方不明中だったので写真は撮れなかった（掲載しているのは後日の写真）。